今和次郎「日本の民家」再訪:近畿

今和次郎「日本の民家」再訪:近畿

近畿地方の調査は、まず堺の郭に入った。かつて郭と大阪の街を隔てていた掘割は埋め立てて高速道路の高架が立ち、今和次郎が採集した長屋があったはずの一角は堀の跡を示す長大な公園になっていた。区画までは確認できたものの建物は確認できず、おそらく失われたものとして、その所在地は特定に至らず。街には寺社を持たない寺が多く存在し、自動車部品の生産を行う小規模工場が多く見受けられた。堺の鉄砲鍛冶の流れを汲むものと見ることも出来るが、定かではない。

続いて、奈良平城京の近くで2件の調査。一件は同定確認し、当主のお許しを得て、敷地と建物の実測を行うことが出来た。ついで郷土史家の方にこの辺りの古図を見ながらお話を伺い、帰り足で法蓮町に移動し、法蓮の長屋を探すがおそらく失われたものと判断。近くの、典型的な法蓮町風の作りの家を内見させていただいた。

次いで、八瀬にわたる。美しい場所。バイパスが集落の外れを通っているが高い位置を通して音が上に抜けるようになっているため、谷間の集落は静寂を保っていた。桜が満開であった。ベンガラを使った建物。よく造られた屋根瓦など、集落の豊かさを象徴するいくつかのものごとを写真に収めた。