「複写」とは写真の仕事の中で一番地味なものです。
20年ほど前に撮影の仕事を始めた頃、最初に定期的な仕事にありついたのが書籍編集の原稿として、あるいは映像資料のデータベース構築のための一次資料として、美術書や文献を複写することでした。当時はまだフラットベッドスキャナにも充分な性能のものがなく、高解像度のフィルムで精密な複写を作り、それをドラムスキャナでデータ化する手法が必要な品質を得る唯一の方法でした。その工程の入口となる「複写」を担当し、様々な素材、形状、技法による資料と向き合っておりましたので、高精度と同時に能率も高い複写の技術は人後に落ちることはないものと自負します。
主力の作業環境は市販最大クラスの大型複写台、1600万画素ローパスレスの高先鋭性DSLRを用い、それに撮影対象の素材、形状、保存状態に応じたサポート器具やライトヘッドを組み合わせます。特にお役に立てるものとして、素材やサイズのせいでスキャナにかけることができないドローイングなどを想定しております。かなり特殊な要求であっても、ご相談いただければおよそのことには対応可能です。(もちろん無理なものもありますが…)
また、学生時代とその後の母校勤務時代に、国内での暗室用/複写用バキューム装置の特許を抑えてしまいいろいろな意味での影響を其の界の技術の発展に与えた功労者である脇リギオ先生の元でバキューム装置の構造と応用に関しての基礎知識を身につける機会に恵まれました。それを応用することで、ガラスで押さえたりパネル張りなどが不可能な素材のものでも、ほぼ完全な平面維持を実現できる場合があります。余所で複写を依頼したけれども満足な結果が得られなかったというようなものこそ、ぜひ一度ご相談下さい。