背面液晶にライブビューを表示させてフォーカシングした方が、ペンタプリズムファインダーよりも正確にフォーカシングできるという話には、少し留保が必要だなと感じている。今日もそのての話に触れる機会があったので、それを機に少し書いてみようと思う。
まず原理的な話として。一眼レフのファインダーメカニズムは非常に高い精度が要求されるものだということは前提になる。そして、達成できる精度には限界があることも事実だ。一眼レフでは、ミラーで曲げられた光路上のフォーカシングスクリーンのマット面と、ミラーが跳ね上がった際の光路上にある撮像面が、完全に等価であることが求められる。しかし、現実には製作上の精度や、作動毎のミラー停止位置の微妙な誤差により、その等価性には限界がある。フィルムの時代には、フィルムの位置精度自体、かなりおおらかなものでしかなかったので、あまり問題にならなかったが、完全な平面である撮像素子に対して、これでは不足であるという立場もとることはできる。
一方、ペンタプリズムファインダーの対抗馬として進境著しいミラーレスカメラのコントラストAFやライブビューファインダーは、実際に撮像素子から得られる信号/映像に基づいてフォーカシングを行なうので、少なくともその等価性においては疑いようもない。その辺りを根拠に「ライブビューを拡大して慎重にMFでフォーカシングした方が正確なフォーカシングが可能」と言われることが増えてきたように思う。
しかし、私個人の実感としては、そんなにライブビューの見えっていいかなぁ…と思うのだ。D800Eを買って実際に使い込むまでは、そういう宣伝文句を真に受けていたけれども、実際に今、D800EをVCC Proにつけてブツ撮りをする時には、フォーカシング操作はペンタプリズムファインダーで行なっている。ライブビューは、その結果を確認するために使っているにすぎない。
仕様を確認した訳ではないのだが、ライブビュー表示はタイムラグを抑えるために、撮像素子からの信号を間引いて読み出し、さらにそれを軽い負荷でできる処理でスクリーンに表示しているにすぎないと考えている。当然そこで見ることができるディテールの情報量やシャープネスは、実際に撮影される画像ほど豊かなものではない。先に述べたような光学的等価性においては、ペンタプリズムファインダーよりも優れている訳だが、ユーザーインターフェイスとしての完成度では、歴史のあるペンタプリズムファインダーの方にまだ一日の長があるように思われるのだが。
少なくとも私にとっては、それが真実だ。決してD800Eのファインダーは優秀なものではないけれども。
追記
ただし、16MPの最新の素子を積んで、fullHD 60pで動画記録できる帯域を持つm4/3ミラーレス機のファインダーは別の話になる。その辺りはもう少し、納得いくまで理解したら書いてみようかとも思う。