PENTAXから試写用のレンズをお借りする機会があった。(プロサービスのプログラムの一環として借り出したもので某ステマ記事とは無関係です)
興味を持っている方には説明の必要はないはずだが VCC proの概略について。VCC proは、中判一眼レフ用のレンズや大判用レンズ、あるいは引伸し/製版用レンズなどのような、イメージサークルに余裕のあるレンズを用いて、DSLRでアオリ撮影を実現する機材。VCCという名称は Vew Camera Converter の頭文字から来た略称で、ビューカメラに準じた蛇腹とフロント/リアスタンダードをもち、振り系のアオリをフロントで行ない、リアでズラシ系を受け持つ構成をとっている。
ただし、実際にはビューカメラほど自在にアオリが利くわけではない。何が利点かと言えば、後枠で上下と左右の二軸のズラシが利くので、TSレンズよりは構図の微調整がやりやすく、それに伴う主点の移動(世界観の崩れ)が無い。TSレンズが大判カメラでいうフィールドカメラにあたるとすれば、さしずめ VCC proはテクニカルカメラに相当する能力を持つと考えることができるだろう。
smc PENTAX-FA645 35mmF3.5AL[IF] @F11
smc PENTAX-FA645 45mmF2.8 @F11
† いずれもピントは、立てかけてあるベニアとウマに合わせてあります。
サーバーのスペックの関係で36MPのフル解像度データはアップできないので、6MPに出力したデータを掲げてあります。
まず、35mmの方はD800Eの素子の性能に十分見合った解像力があると言っていいだろう。それに対して45mmは少しキレが甘い。拝借したレンズはプロサービスの窓口で簡単なチェックを受けてはいるのだが、結果を見ると、45mmの方に色収差の分布状況の不自然さが見られるので、あるいは軽い偏心のために本来の性能がでていないかもしれない。
下に、それぞれの画角中央付近と画面端を切り出したものを示す。クリックして開くとオリジナル解像度で見ることができます。
中央付近
detail: smc PENTAX-FA645 35mmF3.5AL[IF] @F11
detail: smc PENTAX-FA645 45mmF2.8 @F11
画角周辺部
detail_peripheral: smc PENTAX-FA645 35mmF3.5AL[IF] @F11
detail_peripheral: smc PENTAX-FA645 45mmF2.8 @F11
おそらくこの45mmレンズは初代のPENTAX645(銀塩)用に設計された45mm F2.8の光学系をそのまま引き継いでいる。だとすれば30年前の設計の大口径広角レンズであり、焦点距離から考えても、35mmがランドスケープ用に精細な描写を狙った超広角であるのに対し、45mmはスナップやファッションポートレート向けの広角レンズと見るべきで、シャープネスを厳しく求めるのは酷なところがある。
FA645 35mmについては、見ての通り優秀なので特に言うべきことはない。シフトレンズとして考えるとディストーションがやや大きく、建築写真やインテリアには少々辛いが、例えばギャラリーの撮影などのような、空間描写そのものが主題ではない用途ならば十分使えるという印象を持った。ちゃぶ台の手前側が両レンズとも少し流れて見えるが、これは収差による結像の乱れというよりは被写界深度から外れてわずかにボケているせいだろう。そのボケが、広角レンズ故の堅さによって、流れのように見えているのだと思われる。平面のチャートを作って撮影すれば、周辺解像力ももっと正確に把握できるとは思うが、今回の目的はとりあえずギャラリー撮影用にどうかという味見だけなので、自然光でうちのオザスタをただ撮ってみた。いずれもっときちんとテストをしたい。(その時はカメラが別のものになっているかもしれないけど)