今和次郎「日本の民家」再訪:吹浦

今和次郎「日本の民家」再訪:吹浦

吹浦は鳥海山の麓にある街。鳥海山信仰の寺町であると同時に、河口の漁村としての側面もあったが、現在は酒田での勤めや、近隣に誘致された工業団地への就職などが若手の生業の柱となっているようだ。

集落は神社に近い方から、寺町、元町、新町の三地域に分かれる。寺町は、寺社領など直接寺に関係するところ。元町はかつて参拝客のための旅籠や見世などで栄えた一角。元町から河口に下る一角にはかつて河岸であった一角が残っており、途のうねりに海岸線の面影が残り、舟屋のあとにガレージが連なり、現代の舟たるところの自動車がたたずむ。新町は、それよりは後の時代に徐々に集まって派生拡大した部分にあたる。

現在はさらにその外側に、かつて農地だった区画を宅地化する動きがあり、田んぼの中に唐突にハウスメーカーの住宅が建っていたりする。おそらくは、地主である農家の次世代が勤めに出て、親世代の農地の一角に家を建てているものと思われた。